太陽電池用部分影補償器を統合した
「部分影補償器統合型コンバータ」の開発

鵜野将年
(茨城大学 工学部電気電子工学科 准教授)

2015年12月17日木曜日

姫路飾西高校でのやさしい科学技術セミナー

 母校である姫路飾西高校でやさしい科学技術セミナーを行ってきました。久しぶりに母校を訪れて驚かされる点がたくさんありました。まず、生徒たちのマナーが極めてよく、校内ですれ違う生徒たちが皆「こんにちは」と声をかけてくれる、まるでジブリ映画のモデルになっているような良き時代の爽やかな学校になっていました。また、在学していたころは弱小の部活動が多かったのですが、今は強豪部も多いようで「近畿大会出場」のような幕が校舎の壁にいくつか掛かっているのが印象的でした。制服や学校周辺の風景はほとんど変わっておらず、当時の姿を残したまま大幅にレベルアップした高校になっていました。

 セミナーに関しては、母校での講演ということもあり、まずは長めの自己紹介から入り、続いて講演本編、最後に茨城大生による実演という流れです。パワーエレクトロニクスという一般の人には馴染みのない電気工学に関する講演内容ということもあり、高校生にとっては取っつきにくくイメージの難しい内容だったと思います。高校生を対象とした講演なので普段の大学での講義や学会発表とは勝手が違い、卓球選手が普段打ち慣れているスマッシュを封印して卓球をやっているような感覚での講演でした。言葉を慎重に選んで説明したつもりでしたが、講演中の生徒さんの表情から察するに伝わっていない部分も多く、もう少し別の伝え方があったかなと反省する点が多々ありました。
 セミナー最後部分では茨城大生2名(篠原俊樹君、杉山一希君)が立派な実演をやってくれました。具体的には、太陽電池模擬電源とパワーエレクトロニクス回路を組み合わせて太陽電池が有効利用される様子を紹介する実演内容だったのですが、受講生徒さんたちの眠気もふっとんでいたようで、僕の講演本編よりもはるかに有益な内容だったと思います。セミナーの1週間前に何度か行った予行演習では失敗続きで実演回路を何度も破壊してしまうという散々な状態でしたが、本番では見事に初成功を収めてくれました。実演をやるという責任感から二人で何度も事前練習を重ね、実演を通じて成長してくれたことは今回のセミナーの大きな収穫でした。



 最後にセミナー開催にあたってご尽力いただいた財団の方々、姫路飾西高校の先生方、ありがとうございました。

2015年12月10日木曜日

やさしい科学セミナーの実演準備とラジオ収録

 やさしい科学セミナーの開催が来週にせまり、今週は実演の準備をしています。パワーエレクトロニクス機器と模擬太陽電池を用いた実演で、パワエレ技術によって太陽電池が有効利用される様子を高校生に感じてもらう予定です。実演は普段の研究室での実験とは勝手が違い、手際と見栄えが大事になります。研究室の学生と実演の練習をしてみましたが、セットアップに時間が掛かりすぎて変な間ができてしまったり、ケーブルが絡み合って見栄えの悪い実演になってしまいました。お手本にすべきはおしゃべり3分クッキングです。手際よく、見栄えよく、省くべきところは省いて重要な部分はしっかりと伝える、口頭説明を交えて間をつなぐ、そんな実演になるよう練習中です。2名の学生(篠原君、杉山君)のがんばりもあってなんとか及第点レベルにはなりそうですが…



 話は変わり、昨日、学内でラジオの収録をしてきました。FMひたち「ぴたっとラジオン」という番組で、番組内の「そうだ教授になろう」というコーナーでのゲストとしての参加です。このラジオ番組は基本的には有志の学生が運営していて、事前打ち合わせや収録なんかも学生が行っています。佐藤千那さん(茨城大学工学部メディア通信工学科3年)が打ち合わせや収録を担当してくれましたが、社会人勝りのとてもしっかりとした段取りで対応してもらい、とても感心しました。12/17と12/24の2週に渡っての放送です。

2015年11月4日水曜日

企業訪問交流会@茨城大学

先日、大学周辺の企業の方々を大学に招き幾つかの研究紹介を行う訪問交流会が茨城大学で開催されました。ポスターを用いた研究紹介と実際に研究室に足を運んでもらう研究室訪問の2本立ての企画だったのですが、前半部のポスターを用いた研究紹介の方では当研究室の2名の学生(篠原俊樹君と杉山一希君)が活躍してくれました。まだ学部4年生ということもあって企業の技術者との交流はほとんど未経験なのですが、そんな状況にも臆することなく立派に研究説明をしてくれました。



後半の研究室訪問の方では私が研究説明を行ったのですが、説明が深入りしすぎて伝わらなかったかなと少し反省しています。もしかしたら学生に説明をしてもらっていた方が伝わっていたかもしれません。改めて専門外の人たちに研究内容を伝えることの難しさを感じました。

2015年9月16日水曜日

スイスでの国際会議

先週いっぱい、スイスのジュネーブで開催されたパワーエレクトロニクスの国際会議ECCE Europeに参加してきました。やはりヨーロッパということで不慣れな旅行者でも問題なく使いこなせるほど公共交通機関は充実していてありがたかったのですが、スパゲティが一皿3500円もするほどの激高の物価は財布にとって大打撃でした。開催場所は国連支部のすぐ隣の国際会議場で、一部の一般講演は大ホールで開かれていて発表者も気持ちがよかったと言っていました。
今回は口頭発表とポスター発表をそれぞれ一件づつしてきました。私の主な研究対象は再生エネルギー向けのパワーエレクトロニクスなのですが、開催場所がヨーロッパであることと何か関係があるのかもしれませんが、アメリカやアジアで開催される会議と比べて再生エネルギー関連の発表が少なめであったのが少し残念でした。
旅費をなるべく節約すべく、今回は一番安値だったエティハド航空を利用しました。帰りはジュネーブからアブダビ、アブダビから成田と乗り継いできましたが、両方とも夜行便だったので成田に到着した時にはへろへろで使い物にならない状態した。夜行便で失うエネルギーをすぐに再生できるような‘再生エネルギー源’があれば一皿3500円の食事でも喜んで払います。

2015年9月4日金曜日

学生の学会デビュー

8月31日に早稲田大学で開催された電気学会東京支部学生研究発表会に参加してきました。当研究室からは4名の4年生の学生が学会発表デビューをしましたが、みんな堂々とした発表をしてくれました。研究室に配属されてからほんの5ヶ月ですがその成長速度はタケノコ並みです。最近の雨続きの天気のせいで成長が著しいのかなとも思いましたが、やはり研究室生活による環境変化が成長の要因です。学生達ののびしろと成長速度を考えると、来年あたりの国際学会デビューもあるかもしれません。

また、幸運にも1名の学生(矢代和輝君)が見事に優秀発表賞を受賞しました。

2015年7月16日木曜日

研究室プロジェクト(人工衛星用コンバータの開発)


7月の上旬に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究の打ち合わせをしてきました。内容は人工衛星用の新しい電力変換器(コンバータ)の提案と開発です。そもそも、私は大学を卒業してからJAXAで衛星用電源システムの研究開発に106ヶ月ほど従事し、昨年に現在の大学に移ってきました。人工衛星という具体的な用途を目指したモノの開発は学生にとっても非常に良い経験となるので、研究室全体のプロジェクトとして衛星用コンバータの開発に取り組むことにしました。今回は4人の学生と共に打ち合わせに行きましたが、学生達は提案技術をうまく4分割し、個の力を活かしつつチームプレーでプレゼンをこなしてくれました。JAXAのベテラン技術者に対して勇猛果敢にプレゼンをこなす姿はなでしこジャパンに勝るとも劣らず勇ましく、成長の伸びしろも大きそうなので今後の期待が膨らみます。
サッカー関連の言葉を使って学生を持ち上げてばかりいても仕方ないので本題に移ります。人工衛星のエネルギー源は太陽電池と蓄電池ですが、これらを有効活用するためにはたくさんのコンバータが必要になります。具体的に列挙すると、太陽電池制御用コンバータ、部分影補償器(太陽電池用補助コンバータ)、蓄電池充放電用コンバータ、セルバランス回路(蓄電池用補助コンバータ)、等です。しかし、たくさんのコンバータを衛星に搭載するとシステムが複雑になりコストも上昇します。更に、たくさんのコンバータがあるとその数の分だけ故障を引き起こす要因(部品)が増えるため、衛星の信頼性も低下してしまいます。このような課題を解決する一手段として現在提案しているのが「統合型コンバータ」というもので、たくさんのコンバータを一体化できる代物です。例えば、スマートフォンは電話、カメラ、ウェークマン、等々のたくさんの機能が一体化された文字通りスマートなものですが、統合型コンバータもたくさんの機能が一体化されたスマートなコンバータなのです。統合型コンバータを使えばコンバータの台数削減が可能となり、システムの簡素化、信頼性向上、低コスト化を同時に達成することができます。財団からの助成で研究を行っている技術もこの統合型コンバータに応用されており、助成の成果が宇宙で活用される日も遠くないかもしれません。
 

2015年6月18日木曜日

韓国での国際会議

今月6月の頭に韓国で開かれたパワーエレクトロニクスの国際会議(ICPE ECCE-Asia)に参加してきました。
アジアで開かれるパワエレ関連の国際会議では最大規模のもので、韓国ということもあってチゲ鍋のような熱い議論が交わされていました。
国際会議に参加するときは、高い航空券代金と参加費に見合った成果を出すためになるべく2件発表するようにしています。
今回も2件の口頭発表を行いましたが、出国前に満足な準備ができず、現地のホテルや喫茶店でお尻に火が付いた火鍋のような状態で発表練習をしていました。
今回の発表内容は、財団からの助成金で行っている研究とも関連する「太陽電池用部分影補償器」です。
一般的に発表後には質疑応答の時間が設けられており、韓国だけにキムチばりの辛口コメントもあるかなと不安に思っていましたが、反応は上々だったかなと思います。
例える韓国料理もなくなってきたので普通に書きますが、会議全体としては太陽電池や風力などの再生エネルギー関連の研究発表が年々増えており、特に太陽電池関連の研究は盛んです。
部分影というのは太陽電池パネルの一部に部分的に影が掛かる状態のことですが、この部分影の影響で太陽電池から取り出せる電力が大幅に低下します。
太陽電池から取り出せる電力が宣伝されている値よりも大幅に小さいというクレームがメーカに頻繁に寄せられているそうですが、部分影のその大きな要因となっています。
イメージとしては、むかで競走をやっているときに一人の足の遅い人(影のパネル)が全体のパフォーマンスを低下させるようなイメージです。
全体のパフォーマンスを向上するには足の遅い人を手助けすればよいということになりますが、その役割を果たすのが部分影補償器です。
この補償器を使えば影の掛かっていないパネルから影の掛かっているパネルへと電力を送り、影の掛かっているパネルの手助けをすることで太陽電池パネル全体の本来の性能を引き出すことができるようになります。
元気のある人が元気のない人を助ける、というような感じのものであり道徳の教科書に載せてもいいような素晴らしいことを太陽電池パネルで実現するのが部分影補償器です。
私の知る限り部分影補償器の実用化はされていないと思いますが、遠くない将来に身近な存在になっているはずです。

2015年5月28日木曜日

はんだ講習会と公開実験準備

 先日、研究室ではんだ講習会を行いました。学生は己の設計した回路を遅かれ早かれ自作することになるのですが、その時に重要なのがはんだ付けのテクニックです。はんだ付けは電気系の技術者や研究者にとっては必須のスキルです。しかし、一般の方々が思っているよりもはんだ付けの技術は実は難しいものなのです。良いはんだ付けというのは、はんだの表面に光沢があり、使用するはんだの量も少ないものです。それに対して、悪いはんだ付けというは一般的に「いもはんだ」と呼ばれ、はんだの量が多くもっこりしていて表面もざらざらです。いもはんだで接続された回路は接続状態が悪く、長期使用の場合は高確率でトラブルを起こします。なので、早いうちにはんだのスキルを身に着けておくことで先々の研究をスムーズに効率的に進めることができるようになります。

 この写真は学生たちが顕微鏡カメラを使ってはんだ付けの練習をしている風景ですが、やはりいもはんだの連続です。季節外れのいもの大量収穫状態でした。比較的見栄えのいい‘じゃが’いもはんだ、長細い‘さつま’いもはんだ、更には三面記事でたまに見かけるお化けカボチャのようなメガ盛りいもはんだ等、秋の収穫祭を5月に感じることができました。ですが、はやり数をこなしていくうちに慣れてきており、数か月後に回路を自作する頃には満足のいくはんだ付けができそうな予感です。
 話は変わり、今週の日曜日に「こうがく祭」と言う、いわゆる工学部のオープンキャンパスのようなイベントが茨城大日立キャンパスであります。ここで、研究室見学に来た学生たちに太陽光発電システムにおいてコンバータ(電力変換器)がどれだけ大事な役割を担っているかを理解してもらえるような実演実験を予定しています。あいにく僕自身は国際会議の予定があり参加できないので、4年生の学生4人で対応してもらうことになりました。そのための準備や予行演習を慌ただしくやっていますが、学生たちにとっては準備や予行演習を通じて学ぶことがとても多く、この類のイベントはいい経験と刺激になっていると実感します。

2015年5月11日月曜日

ブログ始めました

茨城大学の鵜野と申します。今年度、国際科学技術財団より研究助成をしていただけることになり、同時にこのブログも始めることになりました。よろしくお願いします。
先日の4月には研究助成贈呈式に参加させていただき、同年代で他分野の研究者の方や審査員の方たちとの懇親会もありました。今回の研究助成は資源・エネルギー・社会基盤の枠でいただきましたが、普段は電気エネルギーのことくらいしか考えない自分にとっては刺激的な意見交換会でした。
さて…私は去年の10月に大学に赴任してきたばかりで、まだまだ研究のための環境が整っていません。しかしそうとは言っておられず、4月からは4年生が研究室に加わったので、だましだまし進めていっているところです。今までのところ、前の職場から拝借している装置、同じ学科の先生方から譲っていただいた机と椅子、デモバージョンのフリーのシミュレーションソフト、などなど自力以外で入手したもので溢れています。しかし、学生のための什器もたくさん必要なので経費節約のため軽トラでホームセンターと大学を数知れず往復してきました。サラ金に手を出す人の心境が徐々に理解できるようになってきていた最中、研究助成採択の通知があり現在に至っています。藁にもすがる思いとはまさにこの事、今回の研究助成をとてもありがたく感じています。


既に5月になってしまいましたがゴールデンウィークもあったので先月からの進歩は乏しいですが、月末までに国際会議論文2本の執筆、来月頭には別の国際会議での口頭発表も控えているので、連休ボケを早く覚ましてやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

鵜野将年
http://info.ibaraki.ac.jp/Profiles/28/0002703/profile.html